活字書体をつむぐ

Blog版『活字書体の総目録』

2014-01-01から1年間の記事一覧

09D レアリスト・サンセリフ

第二次世界大戦後になると、サン・セリフ体はスイス・スタイルのデザイナーの支持を集めた。幾何学的なサン・セリフ体は敬遠され、19世紀のふるい時代のサン・セリフが再使用されるようになっていった。バウワー活字鋳造所では1956年に「フォリオ (Folio) 」…

09C ジオメトリック・サンセリフ

ドイツでは、ドイツ工作連盟(ドイツ・ヴェルクブント)のメンバーだった、パウル・フリードリヒ・アウグスト・レンナー(1878—1948)による「フツーラ」と、ルドルフ・コッホ(1876—1934)による「カーベル」がある。パウル・レンナーの「フツーラ (Futura)…

09B ヒューマニスト・サンセリフ

イギリスでは、エドワード・ジョンストン(1872—1944)がロンドン鉄道局のために1916年にデザインしたサイン用のサン・セリフ体をデザインしている。このサン・セリフ体は19世紀のサン・セリフ体とはことなり、インペリアル・キャピタルのプロポーションにも…

09A グロテスク・サンセリフ

1816年にウィリアムス・キャズロン四世によって金属活字のサン・セリフ体が発表された。サン・セリフ体はスラブ・セリフ体からの変形とも見られるが、19世紀のドイツでは「ステイン・クリフト(石の文字)」と呼んでいたことから、サン・セリフ体の起源を古…

08 スラブ・セリフ体

スラブ・セリフ体の先駆としてあげられる書体に「アンティーク (Antique) 」がある。ジョゼフ・ジャックソン(1733—1792)の弟子ヴィンセント・フィギンス(1766—1844)によって1815年に制作された。1817年に発行された見本帳に4サイズの「アンティーク」が…

05 20世紀ローマン体

アメリカ リン・ボイド・ベントン(1844—1932)といえば、機械式活字父型(母型)彫刻機(略称ベントン彫刻機)の発明で知られているが、活字書体開発にも携わっている。その代表的な活字書体がテオドール・ロゥ・デ・ヴィネ(1828—1914)と共同で作った「セ…

04 モダンローマン体

フランス フランスのフェルミン・ディド(1764—1836)は、ステムが直線的に構成されるという特徴がある新しい活字書体「ディド (Didot) 」を設計した。現在モダン・ローマン体として知られているスタイルである。 ディド家は18世紀から19世紀にかけて、印刷…

03 トランジショナルローマン体

イギリス トランジショナルとは「過渡期の」という意味の形容詞である。オールド・ローマンからモダン・ローマンへの過渡期のローマン体ということだ。 代表的なトランジショナル・ローマン体が「バスカーヴィル (Baskerville) 」である。イギリスのジョン・…

07 スクリプト体

チャンセリー・バスタルダは印刷用活字書体として成立し、イタリック体として発展していったが、その一方で、個人的で優美な曲線への欲求は銅版印刷へとむかった。 銅版印刷とは、銅製の一枚板を使った凹版印刷の一種である。活字版が陽刻・凸状の版になるの…

02B オールド・ローマン体(後期)

オランダ 17世紀のオランダを代表する活字父型彫刻師としてクリストフェル・ファン・ダイク(1601−1669)がいる。ファン・ダイクは、当時最高水準にあったアントワープのプランタン印刷所で、ギャラモン活字をしっかりと研究していたと推測されている。した…

02A オールド・ローマン体(前期)

イタリア アルダス・マヌティウス(1449−1515)の工房の建物はヴェネチアに残されており、壁面にはアルダスの事跡をしるしたプレートが付けられている。この工房において、多数のギリシャ・ローマ時代の古典文学を出版した。 ビエトロ・ベンボ(1470—1547)…

06 イタリック体

チャンセリー・カーシヴはローマ教皇庁に勤める書記官が様式化したルネサンス期の書法である。チャンセリーとは教皇庁と教会とをむすぶ通信機関である「教皇庁尚書院」をさすことばで、カーシヴとは筆記体をあらわす。すなわちチャンセリー・カーシヴは書記…

01 ヴェネチアンローマン体

プレ・ローマン体 ルネサンス期のイタリアに、ドイツから印刷術を紹介したのはコンラード・スウェインハイム(?—1477)とアーノルド・パナルツ(?—1476)だった。ふたりはドイツのマインツにあったグーテンベルクの工房で働いていた印刷者である。 かれら…

10A ブラック・レター体

テクストゥール(Textur) 10世紀から11世紀になると、アンシャル系のカロリンガ・ミナスキュールはラスティック・キャピタルと結合して様式化がすすんでいった。「ラスティック・カロリンガ」とよばれる過渡期の書体で、ブラック・レターとしての特徴が顕著…

(参考)現在のデジタルタイプから00

Lithos Carol Twombly, 1989 (Adobe) 「リトス」は、キャロル・トゥオンブリー(Carol Twombly , 1959– )が、1989年にアドビシステムズのために設計した欧字書体です。古代ギリシャの碑文書体に触発されてはいますが、忠実に再現したというのではなく、より…

はじめに キャピタルとミナスキュール

インペリアル・キャピタル(Imperial capital) ローマ帝国の碑文書体 ローマ帝国は、紀元前8世紀ごろ、ラテン人がイタリア半島のテベレ川下流域に建てた古代都市国家にはじまる。紀元前272年イタリア半島を統一し、ポエニ戦争に勝利して地中海沿岸一帯を支…

09A-4 和字書体「くろふね」のよりどころ

原資料:『沿溝書体スタイルブック』(草間京平著、日本孔版文化の会、1952年) 草間京平(1902—1971)は東京・芸術倶楽部35号室に「黒船工房」の表札を掲げて、宮城三郎とともに謄写版印刷を本格的にはじめた。書写ゴシック体は、読売新聞の記者であった福…

09B-3 和字書体「めぐろ」のよりどころ

原資料:『センサスの経済学』(児島俊弘・関英二著、農林統計協会、1964年) 『センサスの経済学』は「1965年中間農業センサス副読本」とあるように、農業に関する統計調査の書物である。この書物にはゴシック体で組まれたページもある。本文の近代明朝体と…

09B-1 和字書体「ますらお」のよりどころ

原資料:『活字見本帳』(民友社活版製造所、1936年) 民友社活版製造所は1901年(明治34年)に初代渡辺宗七によって東京・銀座で創業された。渡辺宗七が徳富蘇峰と親交があったことから、民友社出版部、印刷部とも業務提携をしていた。出版を中心としていた…

09B 和字ゴシック(第2期)

用途の拡大 『日本印刷需要家年鑑』(印刷出版研究所、1936年)に掲載された藤田活版製造所の差し込み広告に、細ゴシック活字を見ることができる。六号と9ポイントには文章組の見本もあった。 写真植字機用文字盤としては、1933年(昭和12年)にすでに石井細…

09A-1 和字書体「くらもち」のよりどころ

原資料:『活版見本』(東京築地活版製造所、1903年) 東京築地活版製造所は1903年(明治36年)11月1日に、わが国の活字版印刷史上最大規模の438ページにもおよぶ見本帳を発行した。この見本帳の編輯兼発行者は第5代目社長の野村宗十郎(1857—1925)である。…

09A-3 和字書体「くれたけ」のよりどころ

原資料:『活版総覧』(森川龍文堂活版製造所、1933年) 森川龍文堂は1902年(明治35年)1月、森川竹次郎によって大阪に創業された金属活字鋳造と印刷機器販売をおこなう会社であった。森川健市が第二代社長に就任して、昭和初期には『活版総覧』などの活字…

09A-2 和字書体「はるか」のよりどころ

原資料:『活字と機械』(野村宗十郎編輯、東京築地活版製造所、1914年) 『活字と機械』は、その名のとおり活字と機械の両面から大正初期におけるタイポグラフィを紹介した小冊子である。この小冊子に五號ゴチックなどの和字書体が掲載されていた。築地体の…

09A 和字ゴシック・第1期

欧字書体としてのゴシック(Gothic)は、『活版様式』(平野活版製造所、1877年)にあらわれている。サンセリフと呼ばれるカテゴリーに属する書体である。『活版様式』にはアンチック(Antique)という書体も掲載されている。 漢字書体としてのゴシック体で…

08-3 和字書体「ことのは」のよりどころ

原資料:『辞苑』(新村出編、博文館、1935年) 『広辞苑』以前に、新村出(1876−1967)の編著で『辞苑』という国語辞典が1935年(昭和10年)に発刊されていた。この『辞苑』は博文館から出版され、大ベストセラーとなっていた。『辞苑』には、見出し語にア…

08-2 和字書体「たまゆら」のよりどころ

原資料:『言海』(大槻文彦著、六合館、1931年) 『言海』は、大槻文彦(1847−1928)の著した国語辞典である。1875年(明治8年)に編纂を開始、1891年(明治24年)に刊行された。最初は四六倍判の四分冊として出版され、その後、一冊本や二冊(上・下)本、…

08-1 和字書体「みなもと」のよりどころ

原資料:『新撰讃美歌』(植村正久・奥野昌綱・松山高吉編輯、警醒社、1888年) 『新撰讃美歌』には、『座右之友』(東京築地活版製造所、1895年)および『富多無可思』(青山進行堂、1909年)に掲載された漢字書体の「五號アンチック形」と同一の書体が使わ…

08 和字アンチック

欧字書体としてのアンチック(Antique)は、『活版様式』(平野活版製造所、1877年)にあらわれている。スラブセリフと呼ばれるカテゴリーに属する書体である。『活版様式』にはゴシック(Gothic)という書体も掲載されている。 漢字書体としてのアンチック…

05-4 和字書体「しおり」のよりどころ

原資料:『小學國語讀本 巻八』(文部省、1939年、東京書籍) 井上千圃(高太郎、1872?—1940)は、大正時代の後半から国定教科書の木版の版下を一手に引き受けており、従来との一貫性をたもつということから文部省(現在の文部科学省)活字の版下も井上に依…

05-3 和字書体「さくらぎ」のよりどころ

原資料:『尋常小学修身書巻三』(東京書籍、1919年) 『尋常小學修身書 巻三』は、翻刻発行兼印刷者・東京書籍株式会社、発売所・株式会社国定教科書共同販売所となっている。「修身」の教科書で、二宮金次郎、本居宣長、上杉鷹山、徳川光圀、貝原益軒らが登…