活字書体をつむぐ

Blog版『活字書体の収穫祭』

2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

06B 和字カーシヴ[木版(整版)・近世活字版]

江戸時代の民間出版社による文学系の書物は、木版印刷によって製作された。彫刻によるアウトラインの単純化と力強さが顕著に見られる。 仮名草子・浮世草子・八文字屋本 元禄文化を中心とした江戸時代前期では、仮名草子・浮世草子・八文字屋本がある。仮名…

06A-2 和字書体「さがの」のよりどころ

原資料:『伊勢物語』(1608年)嵯峨本 角倉素庵(与一 1571−1632)は、希代の事業家・角倉了以の長男である。父の事業を継いで海外貿易・土木事業を推進した素庵は、また文化人としても卓越した業績を残している。晩年になって嵯峨に隠棲した素庵は、数多く…

06A-1 和字書体「ばてれん」のよりどころ

原資料:『ぎや・ど・ぺかどる』(1599年)キリシタン版 長崎が開港した翌年の1571年(元亀2年)、岬の突端には「岬の教会」とも称されたサン・パウロ教会が建立された。この教会は1601年(慶長6年)に、当時の長崎で一番大きい「被昇天の聖母教会」に建て直…

06A 和字カーシヴ[古活字版]

安土桃山時代は、長い戦国争乱の状態から急速に統一が達成され、自由闊達な人間中心の文化が展開した。雄大な城郭・社寺などが造営され、内部を飾る華麗な障屏画が描かれる一方、民衆の生活を題材とした風俗画のジャンルが確立している。 寛永年間(1624—164…

10-4 和字書体「さよひめ」のよりどころ

原資料:『さよひめ』(作者不詳、室町後期?、奈良絵本) 室町時代から江戸初期に流行した物語類は御伽草子あるいは室町物語ともいわれるが、その一部は挿絵入りの短編物語の「奈良絵本」の形で伝来している。「奈良絵本」は、嫁入り本とも呼ばれる。奈良絵…

10-3 和字書体「たかさご」のよりどころ

原資料:『風姿花伝』写本(世阿弥元清著、室町前期?、金春本) 室町時代には芸能が豊かな展開をみせて、伝統として受け継がれるような成熟に到達した。芸能とは人間の身体で表現する技法と型の伝承をいい、歌謡・舞踊・演劇などが代表的なものだ。 平安時…

10-2 和字書体「やぶさめ」のよりどころ

原資料:『更級日記』写本(菅原孝標女著、1230年?、御物・藤原定家筆) 鎌倉幕府が成立して政治権力は鎌倉に移動した。そうなると京都は文化の担い手としての公家の都となり、また高度な技術を伝える職人の町にもなった。公家はその文化面の専門性をたかめ…

10-1 和字書体「あけぼの」のよりどころ

原資料:『和漢朗詠集』写本(藤原公任撰、1013年?、御物・粘葉本) 奈良時代の貴族社会の知的活動は、中国の古典を読み漢文を作ることが中心だったが、894年に遣唐使が廃止されて中国文化の受容がとだえると、わが国独自の文化の発達がみられるようになっ…

10 和字マニュスクリプト

写本とは、手書きで書き写して巻子本、冊子本としたものである。木版、木活字版、銅活字版で印刷された冊子を「刊本」という。とくに木版で印刷したものを「版本」ともいう。 書道においては「色紙」などを軸装したものが観賞用としてもっとも評価されている…

0-4 「くまそ」と「えみし」の系譜

明治時代以降にアメリカから伝来した欧字書体に「gothic」、「antique」があり、名称が同一の漢字書体「ゴチック形」、「アンチック形」があらわれた。これを「呉竹体」「安智体」と名付けた。これらと組み合わされた和字書体のカテゴリー名を「くまそ」、「…

0-3 「やまと」の系譜

和様とは日本風の書体のことで、本来はひらがな漢字混じり文で表記されており、漢字・ひらがなをふくめて「和様」なのである。とくに和字(ひらがなとカタカナ)を「やまと」ということにする。 真仮名(万葉仮名)の成立 漢字をかりて音節文字として使用し…