活字書体をつむぐ

Blog版『活字書体の総目録』

書法芸術としての調和体(漢字かな交じり書)

尾上柴舟によって唱えられた「調和体」

「調和体」とは漢字とかなとを調和よく書いた書をいう。書道は基本的に、「漢字」「かな(和字)」「調和体」というジャンルで構成されている。調和体という名称は、尾上柴舟(1876―1957)によって唱えられた。「粘葉本和漢朗詠集」の書を基としたもので、和漢朗詠集漢詩の書体と和歌の書体を組みあわせて、別の漢字かな交じり文を書くという試みであった。

太平洋戦争後、調和体への関心が高まり、それぞれの立場において制作されることになった調和体は、それぞれの会派によって呼び名が異なっている。それぞれの思想性や表現法に違いがあるのかもしれない。

 

書道団体による違い

日展日本美術展覧会)では、尾上柴舟らの働きかけで、1948年から第五科「書」が加わり、現在では、漢字、かな、調和体、篆刻の4部門が実施されている。「調和体」部門は1955年に加えられた。読売書法会は漢字、かな、調和体、篆刻の4部門に分かれている。漢字かな交じり書の「調和体」部門は1995年に加えられている。

毎日書道会」は、漢字、かな、近代詩文書篆刻など、合計9つの部門別になっている。「近代詩文書」は金子鷗亭(1906-2001)が提唱し、1954年に加えられた。産経国際書会では、漢字、かな、現代書、臨書、篆刻・刻字の部門があり、現代書部門のなかに「近代詩文書」が含まれているようだ。

さらに、日本書道美術院では、漢字、かな、新書芸、篆刻の4部門がある。「新書芸」という名称は、飯島春敬(1906-1996)の提唱によるものである。日本書道教育学会では、石橋犀水(1896-1993)が「新和様」を提唱し、漢字かな交じり書の作品化をめざしている。

現在では「漢字かな交じり書」が、現代の国語表記によって書かれた文面をそのまま書作品として書かれたものの総称として使われている。平成元年版「学習指導要領」によって、「漢字の書」、「仮名の書」、「漢字仮名交じりの書」とされている。

 

活字書体としての「調和体」

私は「調和体」ということばが気に入っている。「和字書体」「漢字書体」「欧字書体」に加えて、「和漢欧調和体」としたいところだ。「従属」ではなく、「調和」である。ただし一般的にはわかりづらいので、「日本語書体」あるいは「日本語総合書体」としている。