09C 呉竹体の変形——羅篆形・フワンテル形・ラウンドゴチック形
欧字書体としてのラテン(Latin)、ファンテール(Fantail)、ラウンド・ゴシック(Round Gothic)は装飾用の書体とされている。漢字書体もおそらくは装飾用として用いられるものと思われる。
『参號明朝活字総数見本』(1928年 東京築地活版製造所)は、その名のとおり三号サイズの明朝活字の総数が掲載されているが、それに加えて「ゴチック形」とともに「フワンテル形」と「羅篆形」の見本も掲載されている。
図版:『参號明朝活字総数見本』(1928年 東京築地活版製造所)
青山進行堂『富多無可思』(1909年)には電話用活字として四号ラウンドゴチック形が掲載されている。秀英舎の『活版見本帖』(1914年)には初號丸形ゴヂックを見ることができる。この「ラウンドゴチック形」「丸形ゴヂック」が丸ゴシックの源流にあたるのではないかと思われる。
青山進行堂では、1916年(大正5年)3月に「篆書ゴシック体」を発表して注目を集めた。これによって、篆書体とゴシック体(黒体)との出会いがあったことがわかる。
『活版総覧』(1933年、森川龍文堂活版製造所)の44ページには、「五號丸ゴチック」と「五號天書(篆書)」が掲載されているが、わざわざ次のように注がつけられている。
(丸ゴチックと篆書は少しの違ひであります)
このふたつを比較してみると、どちらも現在各社で販売されている円体(丸ゴシック体)と書法芸術の篆書との間に位置するようである。
図版:『活版総覧』(1933年、森川龍文堂活版製造所)
「フワンテル形」は「ゴシック形」の縦画を細めたスタイル、「羅篆(ラテン)形」は「ゴシック形」の横画を細めたスタイルだ。装飾的な脚色はありますが、基本は「ゴシック形」からのヴァリエーションだと思われる。
「フワンテル形」の完成された書体として「石井ファンテール」(1937年、株式会社写研)があげられる。また「羅篆(ラテン)形」としては「アポロA2」(1969年、株式会社モトヤ)がこれに近い。
「ラウンドゴチック形」は、「丸ゴシック体」として各社から多くの書体が発売されている。