活字書体をつむぐ

Blog版『活字書体の総目録』

08A 安竹体

一般的にはアンチック体とよばれ、明朝体、呉竹(ゴシック)体とともに、現代日本語書体における主要3書体としたい書体である。
アンチック体とは西洋からの外来語であり、漢字書体には不似合いに思われた。
中国では宋黒としているようだがピンと来ない。そこで工夫して、分類名としては安竹(アンチック)体とすることにした。

[ANTIQUE]
欧字書体としてのアンチック(ANTIQUE)は、『BOOK OF SPECIMENS』(平野活版製造所、1877年)にあらわれている。スラブ・セリフと呼ばれるカテゴリーに属する書体だ。ここにはゴシック(GOTHIC)という書体も掲載されている。

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図版:『BOOK OF SPECIMENS』(平野活版製造所、1877年)

[五號アンチック形]
漢字書体のゴシック体、アンチック体は、欧字書体の名称からヒントを得て、隷書体江戸文字の看板文字などを参考にしながら、活字書体として熟成されていったのではないかと推測される。
 漢字書体としてのアンチック体は、『座右之友』(東京築地活版製造所、1895年)および『富多無可思』(青山進行堂、1909年)に掲載された「五號アンチック形」がある。

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図版:『座右之友』(東京築地活版製造所、1895年)

[宋黒]
「五號アンチック形」は、欧字書体のモダン・ローマン体、スラブ・セリフ体の関係を考慮にいれて、あるいは同じころに定着していった漢字ゴシック体を考え合わせて、より現代的に発展したと解釈したい。
 中国において「宋黒」に相当するものではないかと考えている。わが国では、俗に横太明朝体といわれるものと共通する。

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