活字書体をつむぐ

Blog版『活字書体の総目録』

0-3 六書の形成

「文」と「字」の制作段階は、「六書」という表現でまとめられる。六書とは、漢字の成り立ちと使い方の基本的な原則で、象形・指事・会意・形声・転注・仮借という六種類がある。このうち、転注・仮借は、漢字の使い方に関する原則である。

[象形]

 象形とは物の形を写して図形化することで、物の形をかたどった漢字の作り方である。「象形」には、日、月、車などがある。これらは甲骨文字の字形が如実に表している。「日」は太陽を、「月」は半月を、そのものずばり絵画的に描いたものだ。また、「車」は古代の戦車をかたどったものである。ほかに「木」「日」「月」「鳥」「魚」などがある。

[指事]

 指事は点画の組み合わせなどによって位置・数量などの抽象的な意味を直接に表しているものである。一・二・三・上・下・凸・凹などがある。「一」などの数字は、具体的な事物はなく単なる線で表現している。「上」と「下」は、ある基準線の上または下に何かものがあるということを示したものだ。

[会意]

 会意は二つ以上の漢字を組み合わせ、その意味を合成して独立した文字とするものである。例えば「日」と「月」を合わせて「明」、「人」と「言」を合わせて「信」、「木」を三つ合わせて「森」を作るように、その意味を合成して独立した文字とする方法である。

[形声]

 形声は音声を表す文字と意味を表す文字を組み合わせて、新しい意味を表す漢字を作る方法である。「輪」や「銅」「草」を例にすれば、「侖」「同」「早」は本来持っている意味を機能させていなくて、単に発音を示すものとして使われているだけである。このように、音声を表す要素と意味を表す要素を組み合わせて新しい意味をあらわす漢字を作る方法だ。

 漢字そのものの構成には階層化が行きわたっている。最も下位の階層として点画があり、点画の結合体が部品だ。その一例として部首〈偏・旁・冠・脚・垂・構・繞〉がある。この会意・形声が、現在使われている漢字の大多数を占める。部首はもちろん、非部首においても要素として共通の部分が多い。

[形声]

 転注は、ある漢字を原義に類似した他の意味に転用することである。この場合、音の変わることが多い。例えば「音楽」の意の「楽(ガク)」の字を「ラク」と発音して「たのしい」の意に転用するようなことだ。

[仮借]

 仮借とは、音はあるが当てるべき漢字のない語に対して、同音の既成の漢字を意味に関係なく転用するものである。食物を盛る高い脚の付いた器の意の「豆」の字を、穀物の「まめ」の意に用いるというようなことだ。