0-1 和文体と漢文体
和文体
安乎尓余志奈良能美夜古尓多奈妣家流安麻能之良久毛見礼杼安可奴加毛
これは漢字をかりて音節文字として使用した臨時の文字「仮名〈かな〉」である。真書(楷書)でかいたとき「真仮名〈まがな〉」あるいは「万葉仮名」といい、草書でかいたとき「草仮名」という。奈良時代には、日本語の文法に従いもっぱら真仮名(万葉仮名)・和語だけで書かれた文章様式である「仮名文体」で書かれた。
あをによし奈良の都にたなびける天の白雲見れど飽かぬかも
ひらがな漢字交じりにするとこうなる。日本語の文法に従い、ひらがな・和語を主として、わずかに漢字・漢語をまじえることのある文章様式を「和文体」といい、この系統の文章を「和文体系統」という。
漢文体
子曰學而時習之不亦説乎有朋自遠方来不亦樂乎人不知而不慍不亦君子乎
これは中国語の文法にしたがって漢字・漢語で書かれた正規の文字「真名〈まな〉」である。これをわが国では「漢文体」という。しだいに日本語化した漢文で書かれた文章様式「和化漢文」でも書かれるようになった。
子曰ワク、学ビテ時ニコレヲ習ウ、亦説バシカラズヤ。朋アリ、遠方ヨリ来タル、亦楽シカラズヤ。人知ラズシテ慍ミズ、亦君子ナラズヤ。
訓読して、漢字カタカナ交じり文にするとこのようになる。「宣命体〈せんみょうたい〉」、「カタカナ宣命体」から発展した様式であり、この系統の文章を「漢文体系統」という。
和字〈かな〉という表記
「ひらがな」と「カタカナ」は漢字の臨時的な使用ではなく、日本固有の文字として成立したものである。そこで「ひらがな」と「カタカナ」を総称して「和字〈かな〉」と呼ぶ。
なお日本でつくられた漢字は、「和製漢字」ということにしたい。