活字書体設計1

[活字書体をつむぐ]日本・中国・欧米の書写と印刷の歴史に育まれた書体をまとめています。

6-3 『宋名家詞』(1626年−1644年 毛氏汲古閣)

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『宋名家詞』(1626年−1644年 毛氏汲古閣)

 明末清初の代表的蔵書家であり出版者として知られているのが毛晋(1599−1659)である。毛晋は江蘇省常熟の人で、字は子晋、号は潜在という。同郷の学者・詩人である銭謙益(1582−1664)に師事し、学問に励んだ。

 毛晋は、家族から継承した豊かな財産を書物の収集と刊本の出版に投入した。収蔵した書物は汲古閣という専門の建物に収められた。汲古閣に設けた刊刻専用の建物では、刻書、印刷、装丁などの作業が行われた。汲古閣には84,000冊の書物が収蔵され、さらには650種以上の刊本が出版された。

 それらは「汲古閣本」「毛本」などと呼ばれ、現在に至るまで、良質のテキストとして広く流通している。宋代に刊刻された書物の多くが、毛晋の手を経て今に伝わっており、文化の保存と伝播に大きく貢献したといえる。

 毛氏汲古閣の出版物において、もっとも世に知られているのは、書写の風格のある明朝体であり、『宋名家詞』がその代表例だ。

『宋名家詞』六集のうちの首冊に『珠玉詞』がある。作者の晏殊(991−1055)は北宋の著名な詞人だ。宋詞とは、宋代に隆盛を極めた韻文の形式である。「漢文・唐詩宋詞・元曲」という言葉もあるように、詞は宋代を代表する文学だ。宋詞はもともと楽曲に合わせて作られたので、現在では特に歌詞の場合を「詞」という。